詩誌「一個」、届く。

井坂洋子、佐々木安実、高橋千尋の三人が始めた同人誌「一個」の創刊号が届いた。
井坂さん、佐々木さんのお二人は詩を、高橋さんは絵をそれぞれ掲載している。
井坂さんのような有名な詩人が、何故同人誌なのか、という問いも正直あったけれど、
その答えは「『一個』のごあいさつ」にきっちり込められていた。
     
もう数年前の現代詩年鑑に、井坂さんが
「もうわたしはわたしの自由のために詩を書く」
と宣言されていたことを覚えている。その言葉の響きの線上にこの「一個」があるように思えた。
     

詩が踏みにじられていたのだろう。あるいは踏みにじられた「私」を生かすべく詩を書くのだろうと私は感じていた。
生きることが詩を書くことなのだ。詩を書くことが生きることなのだ。
その覚悟を。
     

今日、このとても小さな本を読んでいくと、最後に
「いや生きていること自体が詩かもしれない」という文章にであった。
さらに「『一個』のごあいさつ」にはこうある。
                

「続いていく日々の外側に立つことなく、常に渦中にあって、つき動かされるひとには、
じぶんを対象化し、その軌跡を見たいという透明な欲望もある。詩や散文、それに絵もその延長上に生まれる」
     

井坂さんの詩は、いや優れた詩のすべては、読む私に覚醒をもたらす。
その覚醒がまたわたしを詩作へと向かわせる。
詩を書き出すことは生きることだ。
          

生きることの、なんと幸運な手がかり、足がかりであることだろう。
「一個」を手にそんな感慨にとらわれていた。